『星を編む』を読んで感じた、静かな再生と“つながり”の物語 — 心の奥にそっと灯る凪良ゆうの世界

こんにちは。ミサゴパパです。

凪良ゆうさんの『星を編む』を読み終えて、しばらく胸の中が静かに温かく、そして少し痛むような余韻に包まれていました。物語が大きく動くわけではなく、ドラマチックな展開も少ないのに、読後には“人と人がつながる力”について深く考えさせられる作品でした。

本作は、前作『汝、星のごとく』と世界観を同じくする連作短編集です。けれど、単なるスピンオフではなく、それぞれの人物に焦点を当てた短編が独立して心に染み込んできます。登場人物たちは皆、何かしらの痛みや、言葉にならない生きづらさを抱えて生きています。華々しい成功譚ではなく、ほんの少しだけ日常が明るくなる。その「少しだけ」の変化を、凪良ゆうさんは驚くほど丁寧に描きます。

特に印象に残ったのは、人が変わる瞬間というのは“劇的な奇跡”ではなく、“関わり合いの中にある小さな気づき”から生まれるということでした。主人公たちは誰も完全には救われませんし、問題がすべて解決するわけでもありません。それでも、誰かとの出会いや言葉が、そっと心に灯をともす。たとえば、自信の持てない青年が不器用な他者との交流の中で少しだけ呼吸がしやすくなるように、明るさの裏で孤独を抱える女性が、自分を偽らなくていい場所を見つけていくように。

“完璧な救い”ではなく、“昨日より少し生きやすくなる”——その距離感こそ、本作の温度なのだと感じました。

また、『汝、星のごとく』を読んだ者として嬉しかったのは、前作の登場人物たちの“その後”が、過剰に語られることなく、やさしい輪郭で描かれていた点です。決して劇的な未来が待っていたわけではないけれど、彼らなりの歩みの中に確かな希望がありました。前作を読み終えたときに感じた切なさや痛みが、少しだけ救われていくような感覚です。

そしてタイトルである「星を編む」。
孤独な点が線になり、線が集まって星座になるように、人と人がつながり、生きていく意味が少しずつ編まれていく。読後、このタイトルの重なりが胸にじんわりしみました。
星は最初から星座ではありません。誰かが見つめ、つないでいくことで初めて形を持ちます。人生もきっと同じで、私たちの孤独な点のような毎日が、誰かとの関わりを通して線になり、自分だけの星座に変わっていくのだと感じました。

『星を編む』は、派手ではなく、静かで、優しく、そしてとても人間らしい作品です。生きることに少し疲れているとき、他人とうまく距離が取れないと感じるとき、自分の存在意義がわからなくなったとき。この作品は、そんな心の隙間にそっと寄り添ってくれます。

凪良ゆうさんはいつも、痛みを避けるのではなく、痛みの向こうにある“微かな光”を描きます。本作はまさに、その光を見つめるための物語でした。

読み終えたあと、自分の人生に散らばる“点”が、誰のおかげで“線”になったのか、思わず振り返ってしまいました。そして、これからも誰かと関わりながら、自分だけの星座を編んでいけたら…そんなことを静かに願いたくなる一冊でした。

読み終えてしばらく経っても、『星を編む』の余韻はゆっくり胸の底に残り続けています。あの物語に登場した人たちは、どの人物も「特別ではない、ごく普通の誰か」でした。けれど、その“一見普通の誰か”が、実は内側に複雑な痛みや迷いを抱えて生きている。私たちの日常にも、きっと同じように無数の「編まれる前の星」が存在しているのだと気づかされます。

暮のように、自分の価値が見えず、息を潜めるように生きている人がいるかもしれない。
カレンのように、明るさの裏で孤独を抱えながら、それでも誰かに必要とされたいと願っている人がいるかもしれない。
そして、前作の親たちのように、「大切にしたいのに、うまくいかない」まま誰かを傷つけてしまう人もいる。

人は誰しも、完璧じゃないまま生きています。
この作品は、その不完全さに光を当ててくれる物語でした。

私は本を閉じたあと、自分の身近な人たちの顔がいくつも思い浮かびました。
「どうしてあの時うまく言えなかったんだろう」
「相手もあの時は苦しかったのかもしれない」
そんな“振り返り”ではなく、
「もしかしたらあの人もまた、孤独な点を抱えながら生きていたのかもしれない」
と、そっと想像するようになりました。

想像力は、他者を理解するための最初の一歩です。
そして、理解しようとする気持ちは、自分自身の心も少しだけ柔らかくしてくれます。
『星を編む』は、そんな“想像する力”を静かに育ててくれる一冊でした。

本作を読みながら、私は何度も「誰かに優しくされる経験」について思い返しました。大げさな言葉やドラマチックな出来事ではなく、日常の、ほんの些細な気遣いや、沈黙の中で隣にいてくれた時間。ああいう小さな優しさが積み重なって、人の心は少しずつほどけていくのだと改めて感じます。

登場人物たちもそれぞれ、誰かのささやかな行動に触れ、少しだけ救われていました。
大きな奇跡ではない。
でも、その“小さな光”があるだけで、人は前に進める。
そんなことを教えてくれる物語です。

“星を編む”というタイトルは、何度思い返しても美しい比喩だと感じます。
点と点を結ぶのは、いつだって人との出会いであり、言葉であり、優しさです。
たとえ一人でいるように見えるときでも、人生のどこかで誰かとつながり、そのつながりが星座になっていく。
それは決して特別な人だけに起きることではなく、私たち全員の人生の中で静かに起こっている営みなのだと思います。

『星を編む』を読み終えた今、私は「もっと丁寧に日常を過ごしたい」と感じるようになりました。
目の前の人の気持ちを少しだけ想像して生きること。
誰かの言葉を真正面から受け取ること。
そして、何より自分自身にも、もう少し優しくすること。

この物語は、そうした小さな心がけが、一つの人生を形作っていくのだということを教えてくれる作品でした。

もしまだ読んでいない方がいたら、ぜひ手に取ってみてほしいです。派手な物語ではありませんが、読者の心に静かに寄り添い、読み終えたあともずっと灯り続ける光のような一冊です。

凪良ゆう『汝、星のごとく』感想
ミサゴパパです。今年の本屋大賞に選ばれた凪良ゆう先生の『汝、星のごとく』をやっと読み終えました。 瀬戸内の美しい島で育った高校生、暁海(あきみ)と、自由奔放な母親の恋愛に振り回され、島に転校してきた櫂(かい)。この2人の人生が交錯し、学生時...

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